肉肉しいは広辞苑に載っている?誤用論争と各辞書の掲載状況を徹底調査
グルメ番組やSNSの食レポ、ハンバーグ専門店の看板などで頻繁に目にする「肉肉しい」という表現。噛むほどに肉の旨みが広がる様子を直感的に伝えるフレーズとして親しまれている一方で、「本当に正しい日本語なのか」「広辞苑を引いても載っていないのではないか」という疑問を抱く読者も少なくありません。
言葉の規範を守りたい層からは「日本語の乱れではないか」「誤用が定着しただけでは」という厳しい指摘も上がります。そこで今回は、最高峰の権威とされる『広辞苑』をはじめとする主要国語辞典の掲載状況を洗い出し、言葉の由来や意味の変遷、正しい日本語としての立ち位置を徹底調査しました。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:『広辞苑』(第七版)に食レポとしての「肉肉しい」は未掲載だが、『三省堂国語辞典』や『デジタル大辞泉』には新語として収録されている
- 要点2:誤用ではなく現代の食文化やメディア報道から生まれた造語・新語であり、「肉本来の食感や旨みが際立つ様子」を指す
- 要点3:日常会話やグルメ紹介では定着している一方、改まった文章やビジネスの場では「肉の旨みが強い」「粗挽きの食感」などの言い換えが適切
【辞書掲載の真相】広辞苑に「肉肉しい」はある?主要辞書の一斉比較
結論から明かすと、岩波書店が発行する『広辞苑』(第七版)に、肉料理の美味しさを表す「肉肉しい」は掲載されていません。広辞苑に載っている「にくにくしい」は、漢字で「憎々しい」と書く「非常に憎らしい」「憎悪を催させる」という意味の伝統的な語彙のみです。
しかし、辞書の世界全体を見渡すと対応は分かれています。新語や現代の話し言葉を積極的に採録する方針の小型・中型辞書では、すでに「肉肉しい」がひとつの見出し語として認められています。代表的な辞書における掲載状況と扱いの違いをまとめました。
| 辞書名(出版社) | 掲載状況(最新版) | 語釈・意味の扱い | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 広辞苑 (岩波書店) | 未掲載 (「憎々しい」のみ掲載) | 食感を表す俗用は未収録 | 伝統と規範を重視する中型辞書のため、一過性の流行語か定着語かを見極めている段階 |
| 三省堂国語辞典 (三省堂) | 掲載あり (第八版に収録) | 肉の感じが強く出ている様子などを記述 | 「今使われている日本語」を素早く捉える編集方針が反映され、いち早く公認 |
| デジタル大辞泉 (小学館) | 掲載あり (Web・改訂版で補追) | 肉の味が濃厚である、肉のボリューム感がある | オンラインの即時性を活かし、現代のグルメ用語として実態に即した補正を実施 |
| 新明解国語辞典 (三省堂) | 未掲載 (慎重な構え) | 「憎々しい」を中心に立項 | 独自の鋭い語釈を持つが、話し言葉の定着度を慎重に見定めるスタンスを維持 |
このように、「辞書に載っているか」という問いへの答えは、参照する辞書によって異なります。新語の収集力に定評がある『三省堂国語辞典』や『大辞泉』にはすでに掲載されており、現代日本語の語彙として確固たる地位を築きつつあります。

「肉肉しい」の意味と言葉の由来|なぜグルメ用語として定着したのか
「肉肉しい(肉々しい)」という言葉の本来的な意味は、「肉本来の食感・風味・ボリューム感が前面に押し出されており、肉を食べている実感が極めて強いさま」を指します。また、派生語である「肉肉しさ」は、その性質や度合いを名詞化した表現です。
かつて日本の食レポでは、肉料理の褒め言葉といえば「柔らかい」「口の中でとろける」「ジューシー」といった表現が主流でした。しかし、2010年代以降に巻き起こった赤身肉ブームやクラフトバーガーの流行、粗挽きハンバーグ専門店の台頭により、消費者が求める価値観が「柔らかさ」から「しっかりとした噛み応えと肉本来の旨味」へとシフトしました。
この食文化の変化に伴い、「ジューシー(肉汁が溢れる)」や「脂が乗っている」とは明確に異なる感覚を伝える語彙として、「肉肉しい」がメディアやSNSを通じて爆発的に普及したという背景があります。
言葉の由来としては、名詞「肉」を重ねて形容詞化を促す接尾語「〜しい」を接続した形です。古典的な日本語における「憎々しい(にくにくしい)」と同音であるため、耳にしたときのインパクトと語呂の良さが相まって、食レポの常套句として定着しました。
誤用か正しい日本語か?「日本語の乱れ」論争を言語社会学から読み解く
「肉肉しい」を使うことに対して「誤用ではないか」「日本語の乱れだ」と不快感を示す声は今なお存在します。そうした違和感の根底には、主に2つの理由があります。
1つ目は、古くから存在する「憎々しい」との同音衝突です。耳で聞いた際にネガティブな感情を想起させ、食品に対する形容として下品・不適切に感じるという心理的要因です。
2つ目は、形容詞の文法的な形成パターンに関する違和感です。日本語において名詞を重ねて「〜しい」をつける言葉には、「神々しい(こうごうしい)」「瑞々しい(みずみずしい)」「禍々しい(まがまがしい)」などがありますが、これらは歴史の長い伝統的語彙です。日常的な具体物である「肉」を直接重ねて形容詞にする構造が、新奇で俗っぽく映る点にあります。
しかし、言語社会学の観点から見れば、これは「誤用」ではなく「食文化の細分化が生んだ創造的な新語」と評価できます。既存の語彙(「脂っこい」「ジューシー」など)では代替できない新しい感覚を表現するために、話者たちが自然発生的に生み出した語彙であるため、一概に「乱れ」と切り捨てることはできません。
【実態検証】メディア・SNSでの使われ方と読者の生の受け止め
テレビの情報番組、グルメ雑誌、レシピ投稿サイト、大手口コミプラットフォームにおける実際の使われ方を分析すると、「肉肉しい」はすでに食品マーケティングに不可欠なキラーワードとなっています。
ネット上の口コミやSNSでのリアルな声を集計・検証すると、以下のような傾向が見られます。
【ポジティブな受け止め】
「つなぎを使わない100%ビーフのハンバーグを言い表すのに、これ以上ぴったりの言葉がない」「『柔らかい』ばかりの陳腐な食レポより、肉肉しいと表現された方が味や食感を想像しやすくて惹かれる」といった、直感的な伝わりやすさを評価する声が大多数を占めます。
【ネガティブ・慎重な受け止め】
「テレビのテロップで連発されると胸焼けがする」「高級レストランのメニュー解説やフォーマルな場で使われていると品がないと感じてしまう」といった、使用されるシチュエーションに対する注文が目立ちます。
【実践的な例文と使い方】
- 「このハンバーグはつなぎを極力減らしており、粗挽き肉の肉肉しい食感がたまらない。」
- 「ステーキサンドにかぶりつくと、赤身本来の肉肉しさがダイレクトに伝わってくる。」
- 「大豆ミートでありながら、本物の牛肉と見紛うほどの肉肉しい風味を再現している。」
ビジネスや公の場でどう表現する?類語と言い換えのプロ技
日常会話やカジュアルな食レポでは大活躍する「肉肉しい」ですが、改まった文章、高級飲食店のメニュー説明、ビジネスの場、あるいは小論文などの公的な文書では、より品格のある語彙に言い換えるのが賢明です。
相手や文脈に合わせてスマートに使い分けるための、プロ仕様の類語・言い換え表現を紹介します。
| 伝えたいニュアンス | おすすめの言い換え表現 | 適した場面・例文 |
|---|---|---|
| 肉の味の濃さ・風味 | ・肉本来の旨味が濃厚 ・野趣あふれる風味 ・肉の滋味が豊かな | フォーマルな食評、ホテルやレストランのメニュー解説 |
| 粗挽き感・弾力・噛み応え | ・食べ応えがある ・しっかりとした弾力 ・粗挽き肉の力強い食感 | 食品の販促資料、商品企画書、グルメ記事の導入文 |
| 全体のボリューム感 | ・重厚な味わい ・ボリューム満点な仕上がり ・素材感が際立つ | プレスリリース、公式レポート、贈答品の推薦文 |

【プロの結論】「肉肉しい」を使って良い場面と避けるべき場面の明確な基準
言葉は時代とともに変化し、新しい概念を伝えるためにアップデートされていく生きた道具です。「肉肉しい」もまた、現代の食文化を鮮明に映し出す優れた新語として定着しています。しかし、言葉の持つ「カジュアルさ・俗語性」を把握せずにどこでも使ってしまうと、教養や配慮を疑われるリスクが生じます。
実生活において迷わないための、判断基準を整理しました。
【使って良い場面(効果的なシチュエーション)】
- 個人SNS・ブログ・口コミサイト:直感的な美味しさやシズル感をフォロワーへ即座に伝えたいとき。
- 友人や家族との外食時:フランクな会話で肉の食べ応えを共有するとき。
- カジュアルな飲食店・大衆グルメのPR:ハンバーガー店や肉バルなどで、インパクトのあるキャッチコピーを作るとき。
【避けるべき・慎重になるべき場面】
- 格式高いレストランでの会話・レビュー:「肉肉しい」ではなく「肉の旨味が際立っている」と表現する方が場の品格に調和します。
- ビジネス文書・公的な報告書:客観的かつ規範的な日本語が求められるため、具体的な食感や成分の特徴を述べる表現を用います。
- 年配層や言葉の規範を重視する相手との会話:「憎々しい」を連想させて不快感を与える恐れがあるため、標準的な表現を選択するのが無難です。
【肉肉しい 広辞苑】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:広辞苑の次期改訂版で「肉肉しい」が掲載される可能性はありますか?
A1:可能性は十分にあります。広辞苑は改訂ごとに社会への定着度が高い新語を数百〜数千語規模で追加しています。『三省堂国語辞典』などの小型辞書が先行して収録し、10年〜20年単位で広く使われ続けた語彙は、広辞苑の次期版(第八版など)でも採用されるケースが多いため、今後の改訂動向が注目されます。
Q2:「肉肉しい」と「ジューシー」の決定的な違いは何ですか?
A2:「ジューシー」は水分や油分、肉汁が豊富で口当たりがみずみずしい状態(Juicy)を指します。一方の「肉肉しい」は、肉汁の多さだけでなく「赤身肉の噛み応え」「粗挽きならではの粒感」「肉本来のダイレクトな風味」に重点を置いた表現であり、油っぽさとは対極の肉感を表す際にも使われます。
Q3:「肉々しい」と「肉肉しい」はどちらの表記が正しいですか?
A3:どちらを用いても問題ありません。現代のメディアやWeb上では、踊り字(々)を使った「肉々しい」と、漢字をそのまま重ねた「肉肉しい」の双方が混在しています。辞書の見出しでは「肉肉しい」として表記されることが多い傾向にあります。
まとめ:言葉の背景を知りスマートに使い分けよう
「肉肉しい」は、現行の『広辞苑』には載っていないものの、『三省堂国語辞典』や『大辞泉』には掲載されている立派な現代の新語です。赤身肉の旨みや粗挽きの噛み応えといった、従来の「柔らかい」「ジューシー」では伝えきれなかった新たな美味しさを言語化するために生まれた、食文化の進化を象徴する表現といえます。
誤用や乱れと神経質に排除するのではなく、その生い立ちやニュアンスを正しく理解したうえで、カジュアルな場とフォーマルな場を適切に使い分けることこそが、現代の大人の日本語力といえます。 (出典: 肉肉しい 広辞苑(Yahoo!ニュース))